鉄工所とはどんな仕事？きついことや向いている人を経験13年のプロが解説！

鉄工所といえば、鉄を加工して何かを作ることはなんとなく想像できると思います。しかし、実際どんなものをどうやって作っているのか知らない人は多いでしょう。

鉄工所は小さな町工場から大手企業の工場まで幅広く、顧客によって作っているものも全く違います。

また、鉄工所には様々な工程があり、全てをこなす所もあればどれかの分野に特化した所もあるため仕事内容は会社によって異なります。

この記事では「鉄工所の仕事内容が気になる人」に向けて、鉄工所の仕事を工程ごとに紹介します。向いている人の特徴や勤務形態なども解説するので参考にしてください。

鉄工所とは鉄を加工するプロが集まる工場

鉄工所は、鉄や金属を加工する技術に特化した工場のことです。

• 鉄の切断・曲げ加工
• 溶接で鉄同士を繋ぎ合わせる
• 加工機で精密な部品を製作

上記のような作業が行われ、建築や工業製品、家具などさまざまな製品を作っています。

鉄工所にはどんな仕事があるのか｜6種類に分かれる

鉄工所といっても場所によって仕事内容は変わります。主に下記の6種類を行う所が多いでしょう。

• 計画
• 製缶
• 溶接
• 機械加工
• 塗装
• 検査

どれかに特化した鉄工所もあれば、全てを行う鉄工所も存在します。それぞれの内容を説明していきます。

計画

どんなものを作る場合でも事前計画は必要不可欠です。

鉄工所では、「こんなものを作ってください」と客先から図面を渡され、それを元に製品を作って納品するという流れが基本となります。

まずは図面をCADで書き起こし、必要な材料や工数、作り方などを計画し、スムーズに製作できる準備を進めていきます。

この工程は全ての仕事で最初に必ず行いますが、ある程度の経験と知識が必要となるので初めから任されることはまず無いでしょう。

また、仮に図面がない場合は客先の要望をヒアリングし、製品や部品の形状・寸法・構造・材料などを決定していきます。

製缶

製缶とは、図面の形状に鉄工構造物を組み立てていく工程で、必要に応じてさまざまな加工技術を駆使してタンクやボックスを組み上げていく作業です。

プラモデルを鉄で作るイメージと言えばわかりやすいでしょうか。

いかに寸法精度を確保しながら早く組み上げるか工夫が必要な作業で、時にはかなり複雑な構造のものを順序立てて組み立てていくため、頭も使います。

製缶について>>製缶工とは？仕事内容やきつい点と将来性を経験12年のプロが解説

溶接

溶接は、簡単に説明すると鉄同士を溶かしてくっつける作業です。チーズを焼いてとろけさせ、くっつけるようなイメージと言うべきでしょうか。

溶接にはいくつか種類があり、製品によって方法を選定する必要があります。また、実力の差が現れやすい作業で、上手な人の溶接は見惚れるほど綺麗に仕上がります。

たくさんの資格種類があることや、溶接技術を競う地区大会や全国大会があることから、鉄工業＝溶接というイメージを持つ人も多いでしょう。

溶接について>>溶接とは？メリットとデメリットや種類を初心者向けに解説！

溶接工は辞めとけと言われている？>>溶接工を辞めとけは偏見！きついところとやりがいや向いている人をプロが解説！

機械加工

ボール盤という機械で鉄に穴をあけたり、旋盤やフライス盤という機械で鉄を削ることを機械加工といいます。

加工部分は0.01ミリレベルの公差内(寸法許容値)におさめなくてはならない場合があり、鉄工系の仕事の中でも特に精密な技術が求められる作業です。

仕事をしていく中で機械ごとの特徴を知り、製品に合った適切な機械の選定ができるようになる必要があります。

塗装

製品に防災措置を施すために塗装を行う必要があります。塗装屋に依頼する所もあれば、自分たちで塗装する鉄工所も存在するでしょう。

ただ、塗料を塗るだけでなく、塗料が乗りやすいように事前加工を施したり、塗装の厚みを管理するなど、簡単な仕事ではありません。

検査

作った製品や部品は、納品前に図面通りに出来上がっているか検査を行います。

また、検査した記録はデータとして保管しておき、客先へ提示して品質に問題がないことを証明するためにも用います。

経験を積めば管理系の仕事も増えてくる

鉄工所の仕事は作業だけではありません。

経験を積むと、以下のような管理系の仕事も増えてきます。

見積もり

鉄工所に仕事の依頼が来た場合、まずはどれくらい費用がかかるのか客先へ見積もりを提示します。

内容としては、製品を作るために必要な費用や工程を計画し、材料費や人件費、機械の使用料などを考慮してその仕事にかかる総費用となります。

見積もりはある程度の知識と経験がなければできません。その仕事に必要な工数を正確に算出できるようになるまでは、ひたすら作業することになるでしょう。

材料発注

仕事の受注が決まれば、製作に必要な材料を発注します。専任者が発注から在庫管理まで行う鉄工所が多いとは思いますが、各自で発注を行う会社もあるでしょう。

サイズや材質など材料の種類はかなり多く、それを一通り覚える必要があるため楽な仕事ではありません。また、手違いが起こらないように発注先とのコミュニケーションも必要となります。

基本的には他の仕事もしつつ、発注管理も行うことになるため、複数の仕事を管理できる人に向いています。

鉄工所の給料は平均より少し高い

鉄工所は専門的なスキルが必要なことや、重労働、危険度などから国内の給与水準よりも少し高い傾向にあります。

給料については鉄工所の給料や年収は安い？相場や他業界との比較｜現役の年収も公開！で解説しているので気になる方はこちらもご覧ください。

鉄工所でスキルを身につける方法

鉄工所でスキルを身につける方法は以下の3パターンです。

1. 教育・研修で身につける
2. 仕事を通じて身につける
3. 業務時間外で練習して身につける

それぞれ説明します。

教育・研修で身につける

比較的大きな会社であれば、人材教育に力を入れているため、配属前の研修で基礎を学べます。

鉄工所へ就職したくても未経験だから不安。という方は教育制度が充実している会社なのかも確認するべきでしょう。

仕事を通じて身につける 

鉄工所では、実際の作業を経験することが最もスキルが身につく方法だと思っています。

鉄工所に入社した場合、まずは比較的簡単な作業からスタートするはずです。そこから次の作業へステップアップしていき、段階ごとにアドバイスを受けながら育っていくことが一般的なルートでしょう。

業務時間外で練習して身につける

仕事の中でスキルを身につけることもできますが、必ず苦手な作業が現れます。しかし、チームで仕事をすることや業務時間に制約があることなど、なかなかひとつの作業を長時間集中的に練習するのは難しいでしょう。

その技術を今すぐ身につけたい場合は、業務時間外で会社に残って練習する必要があります。

もちろんこれは強制ではありません。しかし、努力した分スキルが身に付く世界なので、センスよりもやる気がある人が伸びるということは覚えておいてください。

鉄工所はどんなものを作るのか｜製品は多岐にわたる

鉄工所で作られる製品は多岐にわたります。

• 鉄骨などの建設資材
• 機械部品
• 家具やアート作品
• ゲートや手すり
• 容器やタンク

これらはほんの一部にすぎませんが、今回は上記5つを説明します。

鉄骨などの建設資材

鉄工所では建築物や橋などの骨組みとなる鉄骨を製造します。

鉄骨は建物や構造物を安定させる重要な要素です。その分大型かつ複雑な構造なものが多く、複数人で作り上げていくパターンが多いでしょう。

場合によっては寸法規格など合格条件が厳しいものもあり、比較的技術を求められる仕事となります。

機械部品

工業用機械や自動車や鉄道車両の部品など、さまざまな機械部品も鉄工所で製造されます。

これらの部品は工業プロセスや交通の発展に欠かせません。

基本的には機械を正常に動かすために設計通りの精度が求められるため、機械加工による精密な製作が行われます。

家具やアート作品

鉄や金属を使った家具やインテリアアイテムを作る鉄工所も存在します。

客先の要望通りにオーダーメイドで作る場合もあり、デザイン性が最も求められる分野です。

ゲートや手すり

建物の入り口や階段の手すりなど、鉄製のゲートや手すりも鉄工所で製造されています。

安全性やデザイン性を求められる分野となります。

容器やタンク

石油やガスなど、さまざまなエネルギー源を貯蔵するための容器やタンクも鉄工所で製造されます。

タンクは貯蔵しているものが漏れないよう厳しい検査に通る必要があり、そのために特別な技術で製造されています。

鉄工所の仕事はきついのか

多くの人がイメージする鉄工所の仕事は、激しい肉体労働と劣悪な環境の中で仕事をするというイメージが強いのではないでしょうか。

肉体労働だけというわけではありませんが、あながち間違ってはいません。重いものを運んだり、大きなハンマーを振ることもあります。

経験13年目の僕が特にこの仕事をしていて、『きつい・嫌だ』と感じる瞬間は以下の4点です。

• 夏は暑く冬は寒い
• 適性保護具を着用しないと体に悪い
• 怪我をするリスクが伴う
• 技能系の資格取得のためには多大な練習が必要

夏は暑く冬は暑い

基本的に鉄工所内の気温は外気温に影響されるため、夏は暑くて冬は寒いです。

特に夏場は炎天下だろうが保護具フル装備でガンガン火を使った作業を行うため、始業してすぐに汗だくになります。

夏場の鉄工所での仕事は重度の熱中症になる危険が伴います。しかし、最近では業界全般で熱中症対策のためにこまめな水分補給と休憩を積極的に行う取り組みも行われているため、実際の被害者はかなり少ないです。

適性保護具を着用しないと体に悪い

鉄工所では切削や溶接などの作業中に発生する粉塵や火花で肺に悪影響を及ぼしたり、火傷する危険が伴います。

これらを防ぐために防塵マスクや頭巾などの保護具を着用することが義務付けられているのですが、これがまた煩わしいです(笑)

怪我をするリスクが伴う

鉄工所での作業は機械に巻き込まれる・高所から転落するなど、大けがをするリスクが伴います。死亡災害の発生も1年に1度くらい耳にします。

鉄を加工できるほどのパワーを持つ機械は簡単に人間の命を奪います。

しかし、実際は定められたルールさえ守っていれば怪我をすることはまずありません。今の時代、どの会社も安全への意識が高く、どんな作業よりも安全を最優先しています。

技能系の資格取得のためには多大な練習が必要

鉄工所では技術を証明するためにさまざまな技能資格を取得しますが、基本的に会社でしか実技試験への対策(練習)ができません。

試験の難易度によっては毎日何時間も練習する必要があります。

しかし、難易度が高いほど取得したときの見返りは大きいため、挑戦する価値は大いにあります。

勤務形態は会社による！

鉄工業界はあまり休みがないイメージを持つ人が多いかもしれません。しかし、しっかりと休めるホワイト企業も多いです。

ですが、仕事がきついかどうかは会社によるというのが正直なところです。会社によっては休日出勤やサービス残業が当たり前となっており、まさに奴隷のように働かなければなりません。

上記のようなブラック企業はやはり小さな会社に多い傾向にあります。鉄工所で働くことに興味があり、勤務時間を少しでも短くしたいのであれば大手または中規模の鉄工所を選んでください。

鉄工所で仕事をするメリット｜良かったと思える点

鉄工所の仕事について、上記ではマイナスな面を紹介しましたが、その反面良かったと思える点ももちろんあります。

• 資格をたくさん取得できる
• 自分のペースで仕事ができる
• DIYスキルが身につく
• 良い運動になる

それぞれ説明します。

資格をたくさん取得できる

鉄工所に勤めているとたくさんの資格を取得することになります。

資格を取るほど自分の価値が上がるため、仮に違う会社へ転職する場合にも役立ちます。もしかすると更に待遇の良い会社から声がかかるかもしれません。

自分のペースで仕事ができる

鉄工所で製品を作る場合、納期などのスケジュールを管理しながら進めていきますが、工期に余裕がある場合はサボりながら仕事を進められます。(言い方は悪いですが)

また、仕事の進め方は基本的に自由で、自分のアイデア次第ではかなり時短できます。その点でやりがいを感じられるのも鉄工所の仕事の魅力です。

DIYスキルが身につく

鉄工所の仕事の中で身に付いた知識やスキルは家庭でのDIYにかなり役立ちます。僕自身、子供のおもちゃ棚やキャンプ道具などいろいろ自作しました。

良い運動になる

鉄工所の仕事は体を動かすことが多いため、自然と運動になり筋力も鍛えられます。

また、年齢に比べて見た目が若い人も多く、適度な運動によってアンチエイジング効果が得られる仕事といってもいいでしょう。

もっと工場勤務を知る>>工場勤務あるある30選！同業者が絶対に共感できるリアルな内容を徹底網羅

鉄工所で仕事するのに向いている人

鉄工所で仕事するのに向いている人の特徴は以下の点です。

• 向上心のある人
• 想像力がある人
• 集中力がある人
• 手先が器用な人
• 危険察知能力が高い人

それぞれ説明します。

向上心のある人

どんな仕事にも共通しますが、向上心がある人は伸びます。

現状に満足せずに技術を磨く向上心を持った人や、時間を惜しまず練習できる人が実力を伸ばしていけます。

想像力がある人

製作前の図面読み取りの段階で製品をイメージしたり、製作時にどのような手順で作り上げていくかなど、鉄工業には想像力が求められます。

集中力がある人

鉄工所の作業は精度を求められる細かい作業や、同じ製品をいくつも製作する繰り返し作業など、飽きずに継続できる集中力が求められます。特に繰り返し作業は同じクオリティの維持が大変でしょう。

手先が器用な人

製缶や溶接などは、ミリ単位の寸法確保や綺麗に溶接を仕上げる手先の器用さが求められる作業です。経験でカバーできますが、最初から器用な人は飲み込みが早いでしょう。

危険察知能力が高い人

作業をする中で、危険を察知する能力も求められます。こちらに関しては恐らく口酸っぱく教育されるため心配せずとも頭に叩きこまれるはずです。

鉄工所に向いているか知る方法

鉄工所に向いている人を解説しましたが、それだけじゃ自分に向いているのかわからないよ！と思ったかもしれません。

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まとめ:鉄工所に興味があるなら気になる会社がどんな仕事をするのか理解しよう

鉄工所がどんな仕事をしてるのか解説しました。

鉄工所の仕事は肉体労働が多いことは否めませんが、経験を積んでいけば見積もりや材料発注などの管理業務も任されます。

また、勤務形態や待遇は会社によって異なるため、会社選びは慎重に行いましょう。

今回は以上です。